環農水研・食品技術ニュース第77号 2025年11月15日配信 なにわの伝統野菜「難波葱」、紅白に宿る物語 大阪は江戸時代「天下の台所」と呼ばれたように、古くから食文化が栄え、その食文化を支える大阪独特の野菜が多数ありました。 大阪府では、府内で昭和初期以前(概ね100年前)から栽培され、歴史・伝統をもつ大阪独自の品目を「なにわの伝統野菜」として認証する制度を平成17年に創設し、これまでに25品目を認証。 おおさか環農水研では、関係機関とともに、各地域の農業者が守ってきた伝統野菜の発掘と復活を支援しています。 今号では、冬が旬の、葉の繊維がやわらかく、強いぬめりと濃厚な甘みを持つ「難波葱」について、取組をご紹介します。 「難波葱」は、葉鞘が赤色となる個体が多いのが特徴です。 現在は赤白の分離系統を育成中であり、「紅白」の色合いを組み合わせた新たな商品としての利用を検討中です。 「難波葱」は、平成29年(2017年)に「なにわの伝統野菜」に認証された大阪在来の葱です。 明治時代には大阪市難波周辺で盛んに栽培されていた記録が残っています。さらに遡れば、大阪の葱が1614年頃に関東地方に持ち込まれて「千住葱(白葱)」に、711年頃に京都に定着して「九条葱」になった言い伝えなどがあり、「難波葱」は歴史的にも重要な存在だと考えられます。 それゆえに、見た目は「九条葱」と似るのは当然かもしれませんが、「難波葱」には葉鞘部に赤色を呈する個体が多いという「九条葱」にはない特徴があります。 これは、「難波葱」らしさに偏りがでないように長年にわたり注意深く採種されてきた結果だと考えられます。 この特徴を今後の研究に活かすため、おおさか環農水研では赤色個体と白色個体の選抜を重ねてきました。 さらには、これらの系統を縁起の良い色合いの紅白でセット販売することにより、古い伝統を持つ「難波葱」から新しい価値が生まれることを期待しています。 食品関連事業者を支援する各種メニューをご利用いただけます(一部有料)。 商品開発や品質管理でお悩みの方は、食品グループ(072-979-7063)まで お気軽にお問い合わせください。