プロデューサーメッセージ
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環農水研)は、食物ロスの増加や食料危機などの社会課題の解決を目指して、大学や企業などと共同で「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム」を設立しました(農林水産省「知」の集積と活用の場 産学官連携協議会に8月17日登録)。
世界的にみると、日本などの先進国は少子超高齢社会に突入する一方で、アジア・アフリカなどの開発途上国では急速な人口増加が進行しています。世界人口の増加にともない、食料不足、特にタンパク質危機が懸念され、農地開拓による森林破壊や過耕作・過放牧などによる砂漠化、乱獲による海洋資源の枯渇などの地球環境問題が深刻化しています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)には「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」などの目標が掲げられており、これまでの食料生産システムの見直しが求められています。
昆虫は、タンパク質や脂質を豊富に含むばかりでなく、昆虫飼料で育成した魚の免疫力・抗病性が向上することやラットの脂質代謝を改善することなども知られています。そのため、養殖魚や畜産動物の飼料原料としての有用性だけでなく、その機能性を利用した犬や猫などの愛玩動物や人の健康維持などの効用も注目されています。
昆虫ビジネス研究開発プラットフォームは、昆虫を新たな可能性を秘めた次世代タンパク質資源と位置付け、生産方法や製品性能・安全性の評価、昆虫が有する機能性探索とそれらの用途開発などを通じて、昆虫ビジネスの持続可能性を科学的に検証してまいります。この開かれた研究開発の場の活動により、昆虫利用の未来が拓かれ、SDGsの目標にも合致する、すべての人が安心して暮らせる健康長寿社会の実現に貢献することを念願しています。
2020年8月
昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム 統括プロデューサー
(地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所 理事長)