公開日 2020年12月14日
シンテッポウユリは、在来種で九州南部や沖縄などに分布するテッポウユリと、台湾原産の外来種であるタカサゴユリの交雑種。
夏場に咲くきれいな花が目を引きますが、環境省の「生態系被害防止外来種リスト」で「その他の総合対策外来種」に指定されており、対策が必要です。
絶滅が危惧されるような近隣のユリと交雑してしまうなど、生物多様性への悪影響が懸念されています。
また、花を素早く咲かせ多数の種子をつけるなど繁殖力が非常に強く、全国的に分布拡大傾向が指摘されています。
シンテッポウユリの果実(蒴果)の様子.中に小さな種子が多数入っている.
蒴果内に入っている種子.非常に細かく風に飛ばされやすい.
外来種の対策を効果的に行うためには、早期発見・早期対策が欠かせません。
近年、当研究所(羽曳野サイト)内でもシンテッポウユリと思われる植物が生育しているという情報があることから、分布状況を調査したところ、確認された群生地は2ヶ所のみでした。
すなわち、当研究所(羽曳野サイト)はシンテッポウユリの侵入初期段階であり、今なら効果的な対策が期待できます。
確認したところ、果実(蒴果)の中には多数の種子が入っており、一部が散布されつつある状況でした。
そこで、種子の散布と次年度の個体数の増加を防ぐため、緊急的に蒴果の除去を行いました。
2ヶ所の群生地で見つかった、種子をつけていた個体は合計406個体。
ものによっては1000個近い種子をつけることが知られていますので、緊急対応としては十分な効果があったと考えています。
緊急対応として行った、種子の入った蒴果の除去作業.
除去した蒴果と種子.密封できる袋に入れて種子の散布を防止した.
シンテッポウユリは地下にいわゆる「ユリ根」を持っているので、春にはまた成長が始まります。
また、今回の除去前に散布されていた種子からも、春には新たな芽が出てくることが予想されます。
今後も状況を確認しながら、侵入初期段階で封じ込められるよう、対策を進めていきたいと考えています。
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環境研究部 自然環境グループ(生物多様性センター)
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