公開日 2021年04月22日
2021年3月28日(日)に生物多様性センター第5回談話会「気候変動でどう変わる?大阪の森・里・川・海の生物多様性~」を開催しました。
今回の談話会は、新型コロナウイルス感染症対策のため、Zoomウェビナーを使用したオンライン参加を中心として開催しました。
その結果、大阪府内や関西各県の方だけでなく、北は関東から南は沖縄まで、全国各地の計86名の皆さまから申込をいただくことができました。
当日は、現地参加者を合わせて約80名のご参加をいただきました。ありがとうございました!
話題提供では大阪の森・里・川・海に焦点をあて、明らかになっている影響や今後予測される変化について、4名の講師陣により以下の通りそれぞれご講演いただきました。
まず、当センターの幸田良介主任研究員より、「大阪に遺された冷温帯林 和泉葛城山ブナ林の変化と将来像」と題して、大阪の森・里・川・海のうち、「森」を対象とした講演を行いました。
国の天然記念物に指定されている和泉葛城山ブナ林を対象に、
・山頂部でも着実に温暖化が進行し、ブナ林の成立が困難な気候環境となっていること
・健全な種子生産やブナの更新状況に課題があり、ブナの成木数も減少傾向にあること
などを紹介しました。
次に、当研究所の石井実理事長から、「気候変動で変わる大阪のチョウ相」と題して、「里」を対象に、里山環境などに生息するチョウ類について大阪府立大学名誉教授という立場からご講演いただきました。
ナガサキアゲハやツマグロヒョウモンなどの南方系のチョウ類が分布拡大しているという紹介とともに、ナガサキアゲハを対象とした研究から冬季の温暖化が分布拡大の要因になっている可能性が示唆されたことや、ギフチョウを対象とした研究結果から温暖化の進行によって今後ギフチョウが生息できない地域が増加する可能性が考えられることなどを解説いただきました。
休憩をはさみ、当センターの上原一彦センター長(当時)より、「温暖化で絶滅も・・・天然記念物の淡水魚イタセンパラ」と題して、「川」を対象とした講演を行いました。
国の天然記念物であるイタセンパラの胚発生には、発生ステージごとに最適な水温環境が決まっており、特に冬季には5℃程度の低温が一定期間必須であることが明らかになった一連の研究結果を紹介し、今後の温暖化が進行すると淀川からイタセンパラが絶滅してしまう恐れがあることを指摘しました。
最後に、大阪市立自然史博物館 外来研究員・友の会会長の鍋島靖信氏から、「温暖化におる大阪湾の漁業と海洋生物への影響」と題して、「海」を対象にご講演いただきました。
当研究所水産技術センターに勤務されていた頃からのご経験も含め、
・大阪湾の水温も1990年代以降高くなっていること
・危険な生物を含め南方系の生物が多数出現するようになっていること
・食物網などの相互作用を通じて間接的に多様な生物にも影響していること
・生物相の変化が漁業にも影響を及ぼしていること
などを数多くの事例をもとにご紹介いただきました。
話題提供後の質疑応答では、オンライン及び現地の両参加者から、気候変動が進んでいく中で人間はどうすべきかなどの質問が寄せられ、講師陣との活発な意見交換がなされました。
今回も第4回談話会に引き続き「現地およびオンラインによるハイブリッド開催」を行いました。
途中で音声等の機材トラブルがあり、参加者の皆さまには大変ご迷惑をおかけいたしました。
参加者アンケートでは「温暖化による生物への影響が分かった」など概ね高評価をいただくとともに、「次回もまた参加したい」というありがたい声も多数いただくことができました。
アンケートでいただいた今後の希望テーマも参考にしながら、オンラインでも快適に聴講できる環境づくりにも配慮して、継続して生物多様性の普及啓発に取り組んでいきます。
添付資料
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生物多様性センター (環境研究部 自然環境グループ)
担当:丸山・幸田・今川
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