公開日 2024年03月01日
おおさか環農水研 生物多様性センターでは、淀川水系のイタセンパラ※1(国の天然記念物、国内希少野生動植物種)の野生復帰をめざす取組を国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所と共同で進めています。その一環で、今年度もイタセンパラの稚魚や成魚の確認調査を行いました。
調査結果の概要
- 当センターでは、野生復帰への取組として、2013年10月にイタセンパラ500個体を淀川の城北(しろきた)ワンド※2群(大阪市旭区)に導入しました。その後、2022年まで、自然繁殖を繰り返した個体が継続的に確認されていましたが、2023年の調査では、稚魚や成魚を確認できませんでした。
- イタセンパラは寿命が1年であり、生息環境により個体数に大きな年変動がみられることが知られています。2023年にイタセンパラが確認できなかったことについては、外来種であるオオクチバスやブルーギルによる食害、イタセンパラの産卵のために必要な二枚貝の減少、河川環境の変化など複合的な要因が可能性としてあげられます。
- 今後、外来魚の影響や二枚貝の減少について、さらに調査を行っていくとともに、新たなイタセンパラの導入について検討していく予定です。また、「淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク」(略称「イタセンネット※3」)等と連携して、外来魚や外来水草の駆除などワンドの環境保全活動等を実施してまいります。
参考
※1 イタセンパラ
イタセンパラは現在、大阪府淀川、富山県氷見市、濃尾平野の河川にのみ生息する日本固有種です。淀川ではワンド※2に生息し、その可憐な姿などから“淀川のシンボルフィッシュ”と呼ばれています。1974年に国指定の天然記念物、1995年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」により国内希少野生動植物種に指定され、捕獲等が禁止されています。大阪府警旭警察署の協力のもと、「城北わんどイタセンパラ協議会」(事務局:環境省近畿地方環境事務所)が密漁パトロール等の対策を実施しています。
※2 ワンド
川の本流に沿ってある池状の場所をいい、本流とつながっているか、増水時に接続するような水域のことです。池のように流れが無いか、あっても非常に緩やかで、多くの淡水魚の生息場所となっています。
※3 淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク(イタセンネット)
市民団体、大学、企業、行政などで構成され、淀川においてイタセンパラが生息できる生態系を保全するための活動を行っています。
2011年8月28日設立、2024年2月現在43団体。
問い合わせ先
- イタセンパラの生態、調査結果の評価に関して
大阪府立環境農林水産総合研究所 生物多様性センター
主任研究員 山本義彦
電話 072-833-2770
- 調査全般に関して
国土交通省 近畿地方整備局 淀川河川事務所
副所長 伊藤昌資
河川環境課長 椿 善光
電話 072-843-2861
同時提供
国土交通省 近畿地方整備局 淀川河川事務所
添付資料
■お問い合わせはこちら
生物多様性センター (環境研究部 自然環境グループ)
山本義彦
[TEL]072-833-2770
[FAX]072-831-0229