公開日 2025年03月25日
<概要>
近年、農業の生産性・収益性向上のため、データに基づき栽培技術・経営の最適化を図るデータ駆動型農業が推進されており、大阪府および環農水研でも取組を進めています。データ駆動型農業を実践するためには、温室内の環境データの他、植物体の状態を把握するための生育データの取得が必要であり、自動取得のためのカメラ等の設備投資や生育調査作業の負担が大きな障壁となっていました。
環農水研では、普段使いの農作業具に使用回数をカウントする仕組みを組み込むことで、生育データを取得できる技術を開発しました(実用新案第3245601号)。本技術により、低コストで、また通常の栽培作業をしながら生育データの取得が可能です。これまでに、ナスの着果促進剤処理に使用するスプレー(後述)、ブドウの傘がけを止めるステープラ、収穫用のハサミにカウント機構を組み込んだ試作品を作製し、所内での栽培試験や現地生産圃場で実証試験しています。
また、さらなる改良に取組み、Bluetooth接続によりスマートフォン上でデータ受信、表示、グラフ化が可能なAndroidアプリも試作開発しました。アイデア次第では、農作業具だけではなくその他様々な用具への応用も可能だと考えています。環農水研では、本技術の商品化にご協力いただける企業を募集します。
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カウント機能をつけたスプレーを使ってナスの花に
ホルモン処理をすると、自動で花数がスマートフォン
アプリ上に記録され、データは収量予測に利用可能
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スプレーでのカウンター数と実数の比較
(令和5年)誤差は約6.7%
<ナス栽培での活用>
府内のナス栽培では、安定的な着果のためにスプレーで着果促進剤を花一つ一つに処理する作業が行われています。この作業は、一つの花に一回ずつ行われており、スプレーを操作した数が、後に果実となる花数とほぼ一致します。花数は、ナスの生育状態を把握するデータとして活用でき、さらに得られた花数と温室内の温度データを用いた3週間程度先の収量予測モデルも開発しています。現在、このカウントスプレーは「大阪なす」の産地である南河内地域で大阪府南河内農と緑の総合事務所の協力のもと、6農園以上に試験運用していただいており、「花数が分かるだけでも栽培の浮き沈みが可視化できる」「収量予測の精度が上がれば売り先との調整に使える」「園主だけでなく作業者も植物の状態を実感する機会が増えた」「作業標準にもなる」といった声をいただいています。低コストかつ追加の作業がないため導入の敷居が低く、全国のナス産地への普及が期待されます。
※本研究成果は、戦略的スマート農業技術等の開発・改良事業(SA1-104A2:「ネットワーク・コミュニティーを活用したDX 推進による都市農業振興と人材育成」、令和4年度-令和6年度)の支援を受けて得られたものです。
添付資料
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食と農の研究部園芸グループ
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