大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

大阪湾の生き物図鑑

大阪湾の生き物

ガザミ

ガザミは日本から中国沿岸の30m以浅の砂~砂泥域にすみ、海を泳ぎ渡ることからワタリガニとも呼ばれます。寿命は3年で、5~8月に 浅場で 100~400万粒の卵を産み、卵は細い糸でメスの腹部の脚に付着し、2~3週間でふ化します。幼生は2~3週間の浮遊生活の後、砂浜や河口などの浅場に着底し、ゴカイや貝、エビ、魚などを食べ、甲幅8cm程で沖合へ移動します。ガザミは春から夏に急激に成長し、春生まれのカニは秋に甲幅13~16cmと食用サイズに達します。夏生れのカニは翌春に5~10cmになり、秋には20cm近くになります。ガザミは夜に砂から這い出し、鋭いハサミを使ってエサを捕らえ、アサリなども簡単に割って食べます。しかし、タコに見つかると、なすすべもなく食べられてしまいます。そのためか、タコの多い年はカニが少ないといいます。
 
 ガザミは夏~秋に交尾をし、その際オスは脱皮前のメスを後ろから抱いて確保し、メスが成熟脱皮する時に腹部(フンドシと呼ばれる部分)を開いて向き合って接合し、オスは2本のペニスをメスの生殖孔に差し込みます。メスは精子を貯精嚢に貯めて産卵まで数ヶ月も保有し、その精子を賦活させて受精させます。毎年、秋にガザミが多く獲れますが、刺網にメスがかかると、メスに惹かれた何匹ものオスがその周辺にかかるそうです。
 
 
ガザミは脱皮をして成長しますが、十分にエサを食べると1回の脱皮で甲幅が1.2倍ほど大きくなりますが、エサが不足すると前より小さくなることもあります。脱皮直後は体が柔らかく、外敵や仲間からの食害をのがれるため、殻が硬くなるまで身を潜めていますが、最初に硬くなるのは甲殻やハサミで、腹側が最後に硬くなります。このため、カニを買う時には、背中に汚れや付着生物が付いたものや、腹側が硬く持ち重りするものを選ぶと間違いありません。脱皮が少なくなる晩秋から春に肉質が良く、メスは内子(卵)をもち、大変おいしい時期です。
 
 
 
ガザミの漁獲量は大きく変動し、これには湾内の貧酸素水塊の動向、浮遊期の外敵やタコなどの増減が影響します。平成16年は台風が何回も襲来し、湾内の水が混合され貧酸素化が緩和されたことや、7月まで多かったタコが夏以降減少したこともあってか、9月末に泉大津~西鳥取沖に稚ガニが多くみられ、翌年非常によく獲れました。

(イラストは大阪府提供)

図2 ガザミの生活史

図2 ガザミの生活史