大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

大阪湾の生き物図鑑

大阪湾の生き物

コウイカ

コウイカは背中に大きな甲(貝殻)をもつのでその名があり、マイカ、ハリイカ、スミイカとも呼ばれます。東京湾以西の日本沿岸から中国大陸沿岸、香港にいたる水深100m以浅の砂泥~泥底に住んでいます。大阪湾では春3月~4月に外海から産卵に来遊し、海底の沈木や海藻などにニカワ質の皮に包まれた1.5cmほどの卵を数百個産みつけます。漁師さんはこの習性を利用し、春になると山でツゲの木を切り、餌のかわりに枝をカゴに入れ、イカカゴ漁をします。コウイカはツゲの枝をみつけると、カゴに入って卵を産みます。ガゴは一度入いると出られなくなっており、漁師さんはカゴにはいったイカをとり、卵が鈴なりについたツゲは海へもどします。そして、また次のイカをとるために新しい枝を入れたカゴを海に沈めます。
 
 コウイカは産卵前に求愛の儀式をします。オスが足を高く上げ、体の色を変化させてメスに近づきます。気があえば、向き合い腕を絡ませて交接し、メスはオスから精子の入ったカプセルをもらいます。メスはこの精子を使って卵を受精させ、皮に包まれた卵を一粒づつ丁寧に枝に付着させます。卵の表面には砂泥がまぶされ、敵に見つかりにくくしています。1ケ月ほどで甲長5mmの稚イカが袋を破って泳ぎ出し、間もなく海底に降り、底のケンミジンコやヨコエビ、ゴカイ、エビ、カニ、魚などを食べます。1か月後には甲長2cm、10月頃に10cmになり、底びき網で漁獲され始めます。春には甲長15cmになり、産卵後しばらくして死んでしまいます。
 
 コウイカは体内に水を吸い込んで鰓で呼吸し、その水を水管から吐き出してジェット推進で移動します。餌を獲る時には胴のヒレを波打たせ、微妙に位置を調整します。エサ獲りは巧妙で、海底に座ってからだの色をまわりに合わせ、ハゼやエビを待ち伏せたり、足をすぼめて泳ぎ寄り、体内にしこんだ長い触腕を鉄砲のように発射して餌を捕らえます。触腕は柔軟な肉でできており、足先に多数の小さな吸盤がついています。触腕の吸盤には歯がついた硬い環があり、獲物の体表に食い込み、逃げられないようになっています。
 
 通常、コウイカは12月頃に紀伊水道へ移動し、真冬には大阪湾で獲れなくなるのですが、近年は水温が下がりきらないためか、真冬の2月にも底びき網で漁獲されます。墨の量が多く、昔はこの墨からセピア色の色素をとったので、コウイカの学名はSepia(セピア)属となっています。旬は冬~春とされますが、刺身、天ぷら、煮物など周年何に使ってもおいしいイカです。

(イラストは大阪府提供)

コウイカの生態