大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

大阪湾の生き物図鑑

大阪湾の生き物

マコガレイ

マコガレイは北海道南部から本州、四国、九州、東シナ海北部に分布し、冷水域に多いカレイ類の中では南の方にまでみられる種類です。瀬戸内海や東京湾など浅くて冬に水温が低くなり、餌のゴカイ類などが多い内湾の砂泥底に棲んでいます。1995年まで大阪湾北・中部で底びき網や刺網で大量に漁獲されましたが、近年は資源が著しく減少しています。この減少傾向は東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、九州でもみられ、1994年以降の温暖化傾向や水域環境の変化が影響していると思われます。資源を維持するため、種苗放流を行ったり、 1993年からは大阪府の刺網漁業者が産卵親魚の保護を目的として12月末~1月中旬まで自主禁漁を続けています。
 
 
マコガレイは3~11月まで沖合から沿岸に広く生息し、12月頃沿岸に集まり、 12月下旬~1月に水温が12℃以下になると、10m以浅の粗砂~砂泥域で産卵し、産卵後は再び沖合やその周辺に分散します。砂場の少ない大阪湾奥部では狭い場所に集中して産卵が行われます。メスは全長17cm、オスは13cmで産卵に加わり、夜海底から親魚が泳ぎ上がって産卵放精し、卵(0.7mm)は海底に沈下し、海底の砂粒に粘着して発生します。親魚は全長20cmで22万粒、25cmで45万粒、30cmで82万粒、35cmで135万粒の卵を1回に産出します。卵は7日程(11℃)でふ化し、ふ化直後の仔魚は全長3.8mmで両側に目があり、普通の魚のように泳ぎますが、ふ化後15日全長6mmで頭がねじれ始め、左眼が体の右側に移動し、 1か月全長1cmになると親と同じ体形になって海底で生活を始めます。普通マコガレイの頭は体の右にありますが、天然でも数十万尾に1尾位の割合で左にあるものもいます。また、近年は技術の向上で少なくなりましたが、種苗生産されたものには体の両側が白や背面と同じ色のもの、斑(まだら)模様など体色異常個体も混じります。天然でも体色異常個体が発生しますが、稚魚期までに食われてしまうようです。
 
 
マコガレイはいろいろな生物を食べていますが、その組成は海域よって異なります。湾奥域ではヨツバネスピオなどのゴカイ類が多いので、稚魚から成魚までこれらのゴカイ類を飽食しています。また、湾中部や湾南部では多様なゴカイ類や、キセワタガイなどの貝類、クモヒトデ類、ヨコエビやエビなどの小型甲殻類を食べ、南部に行くほど多様なエサ生物を利用しています。成長は1年で10cm、2年で19cm、3年で24cmと、大阪湾のものは他海域より成長が早く、最大45cmになります。ゴカイ類などは暗い時によく活動するので、それらを喰うマコガレイも夜から朝によく活動しますが、闇夜には釣れにくいそうです。産卵期が近づくと、岸からの投げ釣りで釣れ、最もよく釣れるのは栄養をたくさん取る必要のある産卵後の3月~4月と、産卵前の10月~12月だそうです。
 
 
旬は一般的に「秋~冬」と言われますが、冬産卵後のマコガレイはやせて肉が水っぽく、美味しくありません。しかし、産卵後すぐに海底のゴカイ類や貝類などを腹が盛り上がるほど食べ、3月には肉付きも回復し、5月前後には最も美味しくなります。有名な大分県の「城下がれい」もマコガレイで、活きの良いものは刺身にすると絶品で、唐揚げ、煮付け、塩焼きにするとおいしい魚です。

 (イラストは大阪府提供)

図2 マコガレイの捕食の様子

図2 マコガレイの捕食の様子