大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

大阪湾の生き物図鑑

大阪湾の生き物

ナマコ(マナマコ)

あのグニャグニャしたマナマコに骨があるのを知っていますか。骨と言っても顕微鏡でやっと見える小さな骨で、骨片と呼ばれています。マナマコはウニやヒトデと同じ棘皮(きょくひ)動物に属します。マナマコの肉はウニの殻とトゲ、ヒトデのざらざらした皮と同じ部分で、トゲが小さく変形し、多数の骨片となって厚い皮に埋もれています。マナマコの身体は多数の水が入った管がはりめぐらされ、この管の中の水を動かし、あちこちの管をふくらませたり、縮めたりして身体を動かします。そのため、水を吐いてしまうと、運動ができなくなるのです。マナマコの足は身体の下から出た多数の吸盤つきの管で管足といい、これらの足を伸ばしては吸盤で岩などにはり付き、それを縮めて体を前進させます。


 マナマコの色には赤、青緑、黒、白があり、アカは外海に近い磯に多く、アオとクロは砂泥底に棲みます。種苗生産ではアカ同士ではアカが、アオ同士ではすべてアオとなります。アカとアオは身体の形や堅さ、棲み場、骨片、内部器官の形などが少し違うのですが、マナマコの色変わりとして扱われています(亜種)。マナマコは夏になると岩の下や海底の障害物などに潜り込み、何も食べずに冬眠ならぬ”夏眠”をし、水温が23℃以下になるのを待って起きだし、秋から春に活発に活動します。そのため夏には見かけることも少なく、身もやせ、味もよくありません。マナマコの食事は身体の前にある5方向に枝分かれした触手を用い、海底の泥や砂に混じった有機物(小さな生物や分解中の生物のかけらなど)を食べます。マナマコは海底の泥を食べて綺麗にしてくれる、海のミミズのような存在で、マナマコがいる場所には泥でできたウドンの様な糞がみえます。成長は場所や餌の存在量にもよりますが、アオの方がアカより早いと言われ、1年で6cm、2年で13cm、3年で18cmくらいに成長します。


マナマコは外敵に襲われると、身代わりに内臓を吐き出す習性があります。これを利用して売れない大きすぎるマナマコを水槽で飼育し、驚かせて内蔵だけを吐き出させます。内臓は2週間ほどで薄い膜でできた腸を再生するので、生命に別状はありません。この腸管の塩辛をコノワタといいます。また、春に熟するオレンジ色の卵巣を糸にかけて干したものをコノコといい(三味線のバチに似ているのでバチコともいう)、珍味として非常に高価に取引されます。大き過ぎるマナマコは固くて食べられないので、これを煮て天日干しにしたものをイリコと呼び、中華料理の材料として高値がつきます。奇妙な形をしていますが、海をきれいにしてくれて、食用にしてもおいしく、捨てるところのない不思議な生き物です。