大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

大阪湾の生き物図鑑

大阪湾の生き物

アカガイ

アカガイは真っ赤な血とオレンジの肉をもつので、その名があります。 多くの貝はカニなどと同様に銅を含んだ青い血をもちますが、アカガイは脊椎動物がもつ鉄を含んだヘモグロビン系の赤い血をもっています。赤い血は酸素を運ぶ力が強く、酸素欠乏にも耐える力があるので、酸素が少ない場所に住むゴカイ類やイトミミズ(環形動物)やアカムシ(昆虫のユスリカ幼虫)なども同様の赤い血を持っています。


 アカガイは北海道から九州の水深5~50mの砂泥~泥底に住んでいます。泥がたまる場所というのは、一般に水の流れがゆるく、 表層からエサになるプランクトンなどの有機物が降り注ぐところで、夏には過剰な有機物が分解され、酸素欠乏が起こりやすい場所でもあります。海底の酸素が少なくなると、生きのもは逃げたり、時には死んでしまいますが、アカガイはある程度の貧酸素には耐えることができます。 そして、潮の干満や潮流によって海水が交換され、酸素が回復すると、何もなかったかのように普通に生活をはじめます。しかし、全くの無酸素状態になって底泥から硫化水素が発生すると、さすがのアカガイも死滅してしまいます。


 アカガイは殻長44mmで成熟し、生殖腺は足の筋肉の内側にあり、夏にメスはピンク色の卵を、 オスは白い精子を持ちます。受精卵は0.05mm、幼生はふ化後3週間海中を浮遊した後、海底のゴミや貝殻などに足の糸で付着し、 10ヶ月で殻長3cmになると、海底に潜って生活をします。満1年で殻長3~5cm、2年で5~7cm、3年で8~9cm、5年で10cm以上になります。アカガイは泥に潜るとき、足の中央からでたビニール紐のような足糸(そくし)を海底のゴミなどに付着させて、体を固定します。 また、アサリのような水を出し入れさせる水管がないので、外套膜(がいとうまく)の縁(ヒモ)で水の入口と出口をつくり、吸い込んだ水で鰓(えら)を洗って呼吸し、同時に水中の有機物やプランクトンを粘液にからめて、口に運んで食べます。このため、アカガイは泥に深く潜りません。


大阪湾では昭和40~42年にアカガイやサルボウガイが年間約8000トン以上も獲れ、 岡山県や佐賀県、長崎県などに種苗(しゅびょう)として販売したこともありましたが、最近では漁獲が減少しています。アカガイ減少の原因としては、沿岸域の埋め立てや水質の悪化が大きいようですが、高水温にも弱く27℃をこえると斃死します。初夏から卵を持つので、夏は身がやせますが、 晩秋には回復して旨味が増し、冬から春までが旬となります。

アカガイの生活史(イラスト)

アカガイの生活史(イラスト)