大阪湾の生き物図鑑
大阪湾の生き物
スズキ
スズキは大阪湾に多い魚で、6千年前気候が温暖で海が河内まで入り込んでいた頃の八尾市山賀遺跡から骨が出土するほか、奈良時代の朝廷への貢ぎ物リストにも名前がみられます。姿が美しいことからマダイとともに重要な行事の膳を飾る魚として利用され、成長につれてセイゴ→ハネ→スズキと呼び名が変わる出世魚としても知られています。現在も刺網や底びき網などで大量に漁獲され、平成10~15年の大阪府漁獲量は496~713トン(平均599トン)で、平成12年には全国6位の漁獲がありました。また、クロダイとともに大阪湾の代表的な釣り対象種として、ルアー釣りが盛んです。大阪湾ではスズキのほか、外海の磯にすむヒラスズキ(体高が高い)や、中国から養殖用に持ち込まれたタイリクスズキ(黒い斑点が多い)も時々漁獲されます。
スズキは魚礁や港湾、護岸周辺、河川の下流域などに多く住んでいます。繁殖期は冬で、12月頃寒波が来ると沿岸を離れ、湾南部沖に集まり、12月中旬から翌年1月下旬に産卵します。産卵は風が強い日の夕方に行われ、卵は直径1.3mmの球形(分離浮遊卵)で、水温14℃で4日半でふ化し、ふ化仔魚は全長4.5mm、その後5~6日で卵黄を消費し、全長5mmになると動物プランクトン(ケンミジンコやミジンコ類、多毛類やエビ類の幼生など)を食べ、2ヶ月ほど浮遊生活をします。3月頃(全長1.5cm)になると、湾奥沿岸や河川に入り、その後1年で平均全長23cm、2年で34cm、3年で43cm、4年で51cm、5年で58cm、6年で64cmになり、メスの方がオスより成長が早いようです。
スズキは夕方~夜および早朝に活動し、エビや魚、ゴカイなどを食べますが、大きくなるほど魚を食べる割合が増加し、夏は魚を、冬はエビを多く食べます。毎年6月の大潮の夜に、港内や河口でアシナガゴカイなどが産卵のため水面を遊ぎまわる(バチヌケ)と、どこにこんなにたくさんのスズキがいたのかと思わせるほど集まり、水面をバシャバシャいわせて飽食します。夏にオヨギピンノ(サバガニ)というカニが大量発生し海面を泳ぎまわると、スズキはこれを大量に食べ、このカニのカロチン色素で体表から肉まで黄色くなり、市場から苦情が出ることもあります。また、ロープにつく小さなワレカラ(甲殻類)や泥底に棲むヨツバネスピオ(ゴカイ類)を大量に食べ、胃からコブシ大の塊が出てくることもよくあります。こんな大きな魚がどのようにして小さな生物を集めるのでしょうか。大阪湾はエサが豊富なため、他の海域より成長が良いようです。スズキの上品で淡泊な白身は多くの料理に使え、夏はスズキが最も美味しくなる季節です。
図2 カタクチイワシを喰うスズキ