淡水魚図鑑(在来種)
カ行
カジカ(大卵型)
カジカ Cottus pollux はカジカ科に属する日本固有種で、本州と四国を中心に九州の一部にも分布する。府内では淀川水系、猪名川水系の河川に生息していたが、近年その姿はほとんど見られなくなった。体色は淡褐色から暗褐色まで変異に富む。生活型や遺伝的に異なる3つのタイプが存在し、海に下る小卵型・中卵型と河川陸封性の大卵型がいる。また、琵琶湖にはウツセミカジカと呼ばれる小卵型の湖沼陸封個体群が生息する。現在、府内に生息するのは大卵型で、河川の上流域の礫底に住み、水生昆虫や小魚を食べる。
同じく河川に生息するカワヨシノボリなどのヨシノボリの仲間やドンコに似るが、ヨシノボリの仲間やドンコはスズキ目、カジカはカサゴ目と分類学的にはかなり異なる。姿形が似ているのはいずれの魚種も底生生活に適応した結果であろう。 しかし、本種は鱗がまったくないことや、前鰓蓋骨の後縁に1本のトゲをもつこと、胸鰭の鰭条が分岐しないことで、ヨシノボリの仲間やドンコとは容易に区別できる(検索図鑑へ→カジカとドンコなどの区別)。また、腹ビレ(※1)は2つに分かれており、ヨシノボリの仲間のように腹ビレが合一して吸盤状になることはない。
産卵期は2~6月で、川の瀬の石の下側に雄が空間を作り雌を誘って石の下面に卵を産着させる。産着卵の直径は2.5~3.7mmで、産卵後オスはふ化するまでの数週間卵を保護する。1年で5cm、2年で7cm、2~3年で成熟し最大15㎝に達する。カジカの味噌汁は絶品といわれ、金沢名物のゴリ料理は本種を用いている。環境省レッドリスト2020「準絶滅危惧」、大阪府レッドリスト2014「絶滅危惧Ⅰ類」。
(※1)腹ビレ