大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

淡水魚図鑑(在来種)

ア行

アユ

アユ

アユ Plecoglossus altivelis altivelis はアユ科に属し、北海道西部以南の日本各地、朝鮮半島、台湾、中国に分布する。府内では淀川水系、猪名川水系、大和川水系や泉州 諸河川など広い範囲で採捕記録があるが、遊魚のための放流個体がかなり含まれる。淀川や大和川などでは天然遡上個体が確認されている。
本種は春から夏にかけて川の中・上流域で石の表面の付着藻類を食べて成長し、秋には下流域に下って砂礫底に直径0.8mmくらいの球形の卵を 産みつけ、短い一生を終える。卵は10~20日でふ化し、ふ化した全長6mm程の仔魚は直接海へ下り、浮遊動物を食べ、沿岸部で冬を越す。 翌春8cmほどに成長した稚魚は川を遡り、淡水域の生活に入る。このような生活史を両側回遊という。河川ですごす時期には、採餌のための 約1m四方のなわばりを作り、侵入者を激しく攻撃する。「友釣り」はこの習性を利用した日本独特の釣りである。
本種は付着藻類を効率的にこそぎ落として食べるために櫛状歯(※1)という特殊な構造の歯をもち、そのはみあ とは独特の痕跡が残る。また、スイカに似た香りを放つため”香魚”などと呼ばれ、稚魚期の体が透きとおっている時期には 氷魚(※2)と呼ばれることもある。大阪府レッドリスト2014では「準絶滅危惧」とされている。

櫛状歯

(※1)櫛状歯

氷魚

(※2)氷魚