大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

淡水魚図鑑(在来種)

その他(府内には生息しない魚種)

ムサシトミヨ

ムサシトミヨ

本種はトゲウオ科に属し、キタノトミヨに近縁。未だ学名は決まっておらず、キタノトミヨの亜種とする説もある。東京都、埼玉県など関東地方の一部に生息記録があるが、東京都の個体群は絶滅し、現在は埼玉県熊谷市付近で残存するのみ。背に8-9本のトゲがある。鱗が骨質化した鱗板は尾の付け根部分にのみ存在する。体色は暗緑色で、産卵期には少し黒ずむ。
 平野部の冷たく水の澄んだ細流や池などに生息する。これらの生息地には湧水があるため、夏期でも水温が20℃以下である一方、冬期は凍結しない。また、営巣に使えるような水生植物が豊富であることも生息に必要な条件となる。水生昆虫や小型の甲殻類などを食べる。産卵期には、オスが他のトゲウオの仲間同様に植物を材料にした巣をつくってなわばり行動を示す。成熟したメスが近づくと、オスは巣の中に誘って産卵させる。産卵後もオスは巣を守り、ふ化した仔魚が巣を離れるまで保護する。巣づくりは流れのゆるやかな場所にある植物の茎を支柱として、その周囲に藻の繊維を使って行う。3週間程度でふ化し、半年ほどで体長が3cm程になる。 本種は環境省レッドリストでは「絶滅危惧ⅠA類」に指定されている。