公開日 2022年08月03日
大阪府では、2022年3月に「大阪府生物多様性地域戦略」が策定されました。
地域戦略の背景にある世界、日本、そして大阪の生物多様性を取り巻く最新の状況と、地域戦略の取組について紹介するため、2022年7月17日(日曜日)に「おおさか生物多様性フォーラム 全てのいのちの共生を目指して」を開催しました。
大阪市立自然史博物館講堂とZoomウェビナーを使用したハイブリッド開催とし、全国から約120名の方にご参加いただきました。ありがとうございました!
【基調講演】
石井 実 大阪府立大学名誉教授より、「生物多様性に関する世界と日本の動き」と題してお話しいただきました。
生物多様性と私たちの暮らしの関わりや、世界的な生物多様性の現状、生物多様性条約や愛知目標についてご紹介いただいた後、SDGs(持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals))においては生物多様性保全はその達成を支える屋台骨であるとのお話がありました。
また、現在検討が進められている次期生物多様性国家戦略のキーワードとして、「生物多様性の損失を逆転させて回復させる」ことを意味する「ネイチャーポジティブ」の紹介や、30by30達成のための重要な手段であるOECM等、最新の生物多様性を取り巻くキーワードの紹介がありました。
さらに、ESG金融(環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を考慮した金融)とSDGsの流れを活用した、企業参画によるビジネスと生物多様性の好循環の確立の重要性についてお話がありました。
「30by30」や「OECM」について、詳しくはこちらのページをご覧ください(環境省ホームページへリンク)
【講演】
地域戦略策定にあたり、生物多様性地域戦略部会で部会長を務められた花田 眞理子 大阪産業大学大学院教授より、「大阪府生物多様性地域戦略の策定にあたって」と題してお話しいただきました。
地域戦略の策定にあたっては、大阪府における自然環境の特性や生物多様性の把握に加え、暮らしや経済活動など社会的な特性と生物多様性の関係性も考慮され、国際的な潮流や次期生物多様性国家戦略も踏まえたものであり、その推進にあたっては、多様な主体との連携によって推進する仕組みづくりが重要となるとのことでした。
次に、重光 孝保 大阪府環境農林水産部みどり推進室みどり企画課参事より、「大阪府生物多様性地域戦略について」と題して地域戦略の概要をお話しいただきました。
地域戦略の最終目標は2030年の「全てのいのちの共生」であり、地域戦略に掲げられた3つの目標と、それに向けた取組方針の紹介がありました。
各主体と連携・協働をはかりながら取組を推進していきたいとお話がありました。
休憩をはさみ、「大阪府生物多様性地域戦略の取組と今後について」と題したパネルディスカッションを行いました。
【パネルディスカッション「大阪府生物多様性地域戦略の取組と今後について」】
冒頭では、各主体の取組事例について、3題話題提供がありました。
まずは、佐久間 大輔 大阪市立自然史博物館学芸課長より「大阪府生物多様性地域戦略「自然史博物館の役割」」と題してお話しいただきました。
生物多様性を知らない人にどう伝えるか、博物館等での特別な体験をどのようにして日常の取組につなげるかといった課題の提示がありました。
また、都市域の生物多様性保全のために、OECMの考え方も活かしながら生物多様性関連施設を生物多様性を守る拠点としても位置付けることや、博物館に蓄積された書籍や標本などのアーカイブスの市民利用促進も含めた活用などの提言がありました。
次に、佐々木 正顕 積水ハウス株式会社ESG経営推進本部環境推進部部長より「企業にとっての生物多様性 積水ハウスの活動を例に」と題してお話しいただきました。
企業には生物多様性の価値を加工し、商品やサービスに加工・提案する役割があること、「ネイチャーポジティブ」も企業の役割であり、投資を得たり、企業存続のために取り組むべきであることを述べられました。
また、積水ハウスでの具体的な取組として、「5本の樹」の取組や、現在「みどり」と「イノベーション」の融合拠点づくりが進んでいるうめきた2期のまちづくりにおいて、大阪から世界に向けて、新しい自然と暮らしを発信していくというお話がありました。
話題提供の最後は、当研究所の平松 和也生物多様性センター長より「生物多様性センターにおける取組について」と題して話題提供いたしました。
生物多様性センターの取組の紹介のほか、地域戦略によって各主体の役割やスケジュールが明確化し、研究成果の活用が迅速に行われることが期待されること、研究機関における取組は、生物多様性戦略の各施策を支える屋台骨であり、科学的根拠に基づいた計画策定や効果検証が可能になることをお話ししました。
話題提供後のディスカッションでは、参加者の皆さまから多数のご質問をいただき、生物多様性保全に向けて、消費者の新たな価値観の創出の必要性や、外来生物対策に関する取り組み、生物の好き嫌いを超えて生物や環境とのつながりの中で「なぜそこにいるのか」を考えて許容していくことなど、様々な議論が交わされました。
最後は、パネルディスカッションの座長を務められた花田教授より、地域戦略はつくって終わりではなく、みんなで取り組んでいくことの重要性が改めて示されました。
参加者アンケートでは、概ね「大変満足した」「満足した」と高評価をいただき、その理由として「生物多様性保全についての世界、国、大阪府の取組状況が分かって良かった」「関係者が如何に連携していくかが非常に大切であることを感じることができた」といった意見が挙げられました。
なお、フォーラム内でお答えできなかった質問については大阪府のホームページで回答を予定しています。
見逃し配信
今回、フォーラムに参加できなかった方にも当日のようすをご視聴いただけるよう、YouTube環農水研チャンネルにて、2023年3月31日(金曜日)まで配信を行います。
関連リンク
添付資料
- プレスリリース_「おおさか生物多様性フォーラム 全てのいのちの共生を目指して」を開催します!(2022年6月23日)環農水研[PDF:325KB]
- チラシ_おおさか生物多様性フォーラム 全てのいのちの共生を目指して[PDF:1.16MB]
■お問い合わせはこちら
生物多様性センター (環境研究部 自然環境グループ)
担当:幸田・近藤・丸山
[TEL]072-833-2770
[FAX]072-831-0229