大阪府立環境農林水産総合研究所

 

大阪府水産試験場研究報告 第13号

大阪府水産試験場研究報告   第13号

全文(PDF 10.2MB)  目次(PDF 723KB)

 

  1. 大阪湾における水中型蛍光光度計を用いたクロロフィルの測定と赤潮の判断
  2. 大阪湾におけるカタクチシラスの成長
  3. 大阪湾におけるタイワンガザミの生態について
  4. ガザミの標識法についてⅠ.大型個体への標識法
  5. ガザミの標識法についてⅡ.小型個体への標識法
  6. 大阪湾南部の小型定置網に関する研究Ⅰ.小型定置網の構造と漁獲物組成
  7. 大阪湾奥河口域における幼稚魚の出現種と種類数の季節変化について
  8. 淀川河口域で採捕されたカレイ類幼稚魚

大阪湾における水中型蛍光光度計を用いたクロロフィルの測定と赤潮の判断

山本圭吾・中嶋昌紀
  A Measurement of Chlorophyl Using Submerged Fluorescence Spectrophotometer
in Osaka Bay and Judgement of Red Tide
Keigo Yamamoto and Masaki Nakajima

大阪水試研報(13):1~10,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):1~10,2001

本文(PDF 976KB)

 大阪湾において水中型蛍光光度計によるクロロフィルの測定とその値からみた赤潮の判断について検討した. その結果,大阪湾のようにクロロフィル濃度が常時高いレベルに保たれている海域では水中型蛍光光度計を 用いたクロロフィルの測定でも比較的高い精度が期待できると推察された.さらに蛍光強度が100から200の 時,プランクトンは上位5種で103cell/ml,クロロフィルa量で最低10μg/l程度 存在することが仮定でき,その海域が赤潮と判断することは可能であると考えられた.

このページのトップへ

大阪湾におけるカタクチシラスの成長

辻野耕實・渡 智美
  Daily growth of Japanese Anchovy Larvae Engraulis japonica
in Osaka Bay
Koji Tsujino, Tomomi Watari

大阪水試研報(13):11~18,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):11~18,2001

本文(PDF 582KB)

 1994~1997年に,耳石(扁平石)を用いて,成長調査を行った.その結果,カタクチシラス (全長20~25mm)の日間成長量は4~6月には急速に,7,8月には緩やかに増加し,9月以降は減少するという季節 変動がみられ,4月の日間成長量は0.44~0.47mm,8月は1.00mmと,両月で2倍以上も変化することがわかった. この変化と環境要因との関係をみたところ,日間成長量(DG)は水温(WT)の変動と非常によく対応して おり,DG=0.6972・ln(WT)-1.3101(r=0.92)の関係式が得られた.

このページのトップへ

大阪湾におけるタイワンガザミの生態について

有山啓之
  Ecology of the Blue Swimming Crab Portunus(Portunus) pelagicus
in Osaka Bay
Hirouiki Ariyama

大阪水試研報(13):19~22,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):19~22,2001

本文(PDF 281KB)

 1998年7~10月に延べ6回,岬町落合川河口干潟で調査したところ,7月21日~9月18日に, 甲幅2.7~40.6mmの稚ガニ計81尾が採集された.また,1981~1998年に実施した調査で得られた計267尾の甲幅 と抱卵状況のデ-タをまとめた結果,様々なサイズの個体が周年出現したが,抱卵個体はわずかであった. 以上のことから,大阪湾の個体群は,紀伊水道方面から潮流に乗って来遊する幼生に由来し,7~9月頃に着底し て成長するが再生産にはあまり寄与せず,約1年半後に甲幅120~150mmに達して,冬から春に死亡すると推定された.

このページのトップへ

ガザミの標識法について 1.大型個体への標識法

有山啓之
Marking and Tagging Methods of Swimming Crab Portunus(Portunus) trituberculatus
Ⅰ.Method for Large-sized Crabs
Hiroyuki Ariyama

大阪水試研報(13):23~28,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):23~28,2001

本文(PDF 889KB)

 ガザミの標識法として,ラベル部を切断した長さ125mmのアンカ-タグを試験した.この標識は 遊泳脚基部に打ち込み,染色により個体識別が可能である.この標識を飼育個体と購入個体に装着して60日間飼育 したところ,生残率はそれぞれ91.6%,38.1%であった.また,サイズ別飼育では甲幅81mm以上で大部分の個体が] 正常に脱皮したことから,大型個体の標識法として有効であることが示唆された.実際に947尾を標識放流した結果, 標識ガザミは放流後86日目まで4.1~13.0%が再捕され,購入個体の活力維持が課題として残された.

このページのトップへ

ガザミの標識法について 2.小型個体への標識法

有山啓之・片山 直・松田八束・濱野米一
高垣 裕・浦谷文博・大山 博
Marking and Tagging Methods of Swimming Crab Portunus(Portunus) trituberculatus
Ⅱ.Method for Small-sized Crabs
Hiroyuki Ariyama, Tadashi Katayama, Yatsuka Matsuda, Yonekazu Hamano,
Yutaka Takagaki,Fumihiro Uratani and Hiroshi Ohyama

大阪水試研報(13):29~44,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):29~44,2001

本文(PDF 2.47MB)

 放流サイズのガザミの標識法として,アクチバブルトレ-サ-法,染色標識法,酵素標識法,金粉標識法,金線標識法の 5種類を試験した.この結果,アクチバブルトレ-サ-法ではランタンやユウロピウムが残存するが多大な労力がかかり, 染色標識・酵素標識は残存が悪く,金粉標識は装着時のダメ-ジが大きかった.しかし,金線標識については,容易に装 着可能で,稚ガニへの影響が少なく,標識残存率も88.6%以上と高かったことから,小型個体の標識法として適している ことがわかった.

このページのトップへ

大阪湾南部の小型定置網に関する研究
1.小型定置網の構造と漁獲物組成

辻野耕實・長田凱夫
Study on Small Set Net in Southern Coast of Osaka Bay
Ⅰ.Structure of Small Set Net and Composition of Fish Catch
Koji Tsujino and Yoshio Osada

大阪水試研報(13):45~60,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):45~60,2001

本文(PDF 2.34MB)

 大阪湾南部で操業する小型定置網の漁業日誌(1976~1993年)を整理し,以下の結果を得た.漁獲量は1976~1985 年までは比較的安定していたが,1986年の急増後は漸減傾向がみられた.魚種別には,最も多いのがマアジで全体の29.4%を占める. 次いでメバル,ボラ,スズキ,アイゴが多かった.この定置網漁獲量と大阪府全体,小型定置網全体漁獲量と比較したところ,大阪府 全体とは漁法の違いのほか,漁業経営の相違から主要漁獲物が異なり,小型定置網全体とは海域環境の違いにより毎年の漁獲量変動パ ターンが異なることが推察された.

このページのトップへ

大阪湾奥河口域における幼稚魚の出現種と種類数の季節変化について

大美博昭・鍋島靖信・日下部敬之
  Seasonal Change of Species of Larval and Juvenile Fishes
Occurrence in the Estuary in the Innermost Area of Osaka Bay
Hiroaki Omi , Yasunobu Nabeshima and Takayuki Kusakabe

  大阪水試研報(13):61~72,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):61~72,2001

本文(PDF 880KB)

 1996年4月~1998年3月に,大阪湾奥に位置する大和川河口域において幼稚魚の採集を行い,48種以上6747個体の幼稚魚 が採集された.季節的な出現種数の変化は,水深0.5~1mの定点では冬~夏季に多く,秋季には少なかった.一方,水深3.5m以深の定点では 7月から9月にかけて幼稚魚は採集されなかった.採集された48種中,当水域が成育場となっていると考えられた魚種は10種で,そのうちマコ ガレイ,イシガレイ,ハタタテヌメリなど底生性幼稚魚は貧酸素の解消する秋~春季に加入していた.

このページのトップへ

淀川河口域で採捕されたカレイ類幼稚魚

佐野雅基・有山啓之
  Juvenile Flounders Captured at the Mouth of the Yodo River
Masaki Sano, Hiroyuki Ariyama

  大阪水試研報(13):73~77,2001
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(13):73~77,2001

本文(PDF 657KB) 
 1997年~1999年の3月と5月に淀川河口域で実施した5回のポンプ桁網調査で,イシガレイとマコガレイの幼稚魚をそれぞれ349尾,186尾採捕した.イシガレイは広い範囲で,マコガレイは下流部で主に採捕された.また,両種の全長は,イシガレイ:18~96mm(大部分は65mm以下),マコガレイ:15~70mmで,それ以上に成長すると調査水域外へ移動するものと推察される.これらのことから,淀川河口域は両種の幼稚魚の着底及び育成場所であることがわかり,この水域の重要性が認識される.

このページのトップへ