公開日 2025年04月24日
2025年4月11日に大阪湾南部の海域で操業していた底びき網漁業者によってバイ(通称:バイ貝)が漁獲されました。
バイはバイ科に属する巻貝の一種で、国内では北海道から九州にかけて広く分布しています。日本ではポピュラーな食用貝の一つであり、主に煮付け等で食されています。大阪湾でもかつてはバイを専門に狙う「バイ籠漁」が行われるほど多くの漁獲がありましたが、1980年代から減少し、1990年代には大阪湾から姿を消しました。
これは、外因性内分泌かく乱化学物質※1(通称:環境ホルモン)の影響によるインポセックス※2(雌の雄性化現象)によって産卵ができなくなったことが原因とされています。この原因物質は船底や漁網の防汚塗料に使用されていたトリブチルスズやトリフェニルスズといった有機スズ化合物であることが判明し、現在では有機スズ化合物を防汚塗料として使用することは世界的に禁止されています。
一度インポセックスになってしまった個体が回復することはありませんが、原因物質が取り除かれれば個体群レベルでは徐々に回復すると考えられています。今回漁獲されたバイがどこで生まれたものかは現時点では不明ですが、水質が良くなったことで再び大阪湾に生息できるようになった可能性も考えられます。
今回漁獲されたバイは環農水研水産技術センター(岬町多奈川2926-1)で飼育中です。
今後、雌雄判別や成熟状態の観察を行い、学術論文等で発表する予定です。
- 漁獲されたバイ
- 水槽飼育中のバイ
※1外因性内分泌かく乱化学物質
環境中に存在し、生物の本来のホルモン作用に影響を及ぼす物質のこと。環境ホルモンという通称は、1998年には新語・流行語大賞にノミネートされるなど社会問題になった。
※2インポセックス
Imposed sexual organの略語。雌に雄性生殖器(ペニスと輸精管)が形成される現象。重症の場合、産卵障害を引き起こし繁殖ができなくなる。
添付資料
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