大阪府水産試験場研究報告 第17号
1.大阪湾におけるカタクチイワシ卵分布の発生段階別および経時変化について
2.大阪湾南部の石積傾斜護岸において灯火に蝟集した魚類幼稚仔
3.大阪湾におけるクルマエビの移動について
4.関西国際空港周辺水域におけるスナメリの生息状況について
ノート
大阪湾におけるカタクチイワシ卵分布の発生段階別および経時変化について
山本圭吾・小川玲子・辻野耕實
Developmental and temporal change in distributions of
Japanese anchovy(Engraulis japonicus)eggs in Osaka Bay
Keigo Yamamoto, Reiko Ogawa and Koji Tsujino
大阪水試研報(17):1~8,2007
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(17):1~8,2007
大阪湾において1994年6月の日中、および7月の日の出・日中・日没時にカタクチイワシ卵の分布調査を行った.卵は水平的には湾奥部から大阪府沿岸域で多く出現したが,1日の中でも分布の中心は変化しており,日出時~日没時にかけて湾奥に集積する可能性が示唆された.鉛直的には10m層付近で産卵された後,発生が進むにつれ浮上し,ふ化直前には,再び10m層付近まで沈降する傾向がみられた.多くの卵が表層に分布していたが,淀川河口沖の表層では河川水の影響により発生にともなう浮上が妨げられていることが推察された.
大阪湾南部の石積傾斜護岸において灯火に蝟集した魚類幼稚仔
大美博昭・有山啓之・日下部敬之・辻村浩隆
Larvae and juvenile fishes collected by light-trap sampling at an inclined sea wall
of the southern coast in Osaka Bay
Hiroaki Omi, Hroyuki ariyama, Takayuki Kusakabe and Hirotaka Tsujimura
大阪水試研報(17):9~18,2007
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(17):9~18,2007
2000年5月~2002年4月に,大阪湾南部に位置する水産試験場前の石積傾斜護岸において灯火による採集を行い,魚類幼稚仔の出現状況を検討した.2ヶ年の調査で66種以上8,139尾の魚類幼稚仔が採集された.出現した魚種,その発育段階や体長組成から,石積傾斜護岸における魚類幼稚仔の出現状況は,同じ人工護岸である垂直護岸に比べ,より自然岩礁海岸に近いことが推察された.
大阪湾におけるクルマエビの移動について
辻村浩隆
Movement of Kuruma Prawn, Marsupenaeus japonicus, in Osaka Bay
Hirotaka Tsujimura
大阪水試研報(17):19~26,2007
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(17):19~26,2007
2003~2005年に阪南市地先で行った標識放流から得られた放流群の移動と2001~2005年の標本船調査から得られた天然群の移動をとりまとめた.その結果,7月に放流した群は秋に関空島周辺で漁獲加入し,その後,南へ移動していた.一方,天然群は初夏に湾奥で漁獲加入後,成長しながら南下し,秋に関空島周辺に移動していた.両群は関空島周辺で合わさっていると考えられ,天然群中に小型の放流群が見られた.これらのことから,天然群と大きさを揃えるため初夏に,また,大阪湾全域で放流効果が期待できる湾奥部に加入するように放流すれば効率的に回収出来ると考えられた.
関西国際空港周辺水域におけるスナメリの生息状況について
神田育子・鍋島靖信・葛川沙織・衣川雅子
石田義成・近藤茂則
Study on habitat of finless porpoise Neophocaena phocaenoides around Kansai International Airport
Ikuko Kanda, Yasunobu Nabeshima, Saori Kuzukawa, Masako Kinugawa,
Yashimari Isida and Shigenori Kondo
大阪水試研報(17):27~34,2007
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(17):27~34,2007
スナメリの生息状況を調べるために,2005年8月~2006年7月にかけて,大阪湾の関西国際空港周辺水域において船上からの目視調査を実施した.その結果,ほぼ周年にわたってスナメリを観察することができ,とくに本種の繁殖期を含む春~夏において,多くの発見があった.群れサイズは,1~3頭の場合が多かったが,10頭以上から成る索餌群と思われる大型の群れも観察された.これらのことから,大阪湾においてスナメリが繁殖している可能性が考えられ,さらに関西国際空港周辺水域は,本種の索餌場の一つになっていると推察された.
短報
大阪湾の浅海域で採補されたオニオコゼ幼魚
佐野雅基
Capture of a Juvenile Devil Stinger Inmicus japonicus at Surf Area in Osaka bay
Masaki Sano
大阪水試研報(17):35~36,2007
Bull.Osaka.Pref.Fish.Exp.Stat.(17):35~36,2007
2006年7月23日に大阪湾南部に位置する泉南郡岬町の東川河口域で地曳き網を曳網したところ,オニオコゼ幼魚が1尾採捕された.これはこれまでに大阪湾で採捕されたオニオコゼでは最小の魚体で,全長36.5mm,体重0.77g であった.これまでのオニオコゼ幼稚魚の採捕事例から,今回のオニオコゼ幼魚は砕波帯付近の砂礫帯に生息していたものと推察された.
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