平成25年度微小粒子状物質成分分析結果の概要
平成25年度微小粒子状物質成分分析結果報告書の概要
1 測定地点および試料捕集期間
所管 | 区分 | 測定地点 | 略称 | 試料捕集期間 | |||
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平成25年 | 平成26年 | ||||||
春 | 夏 | 秋 | 冬 | ||||
大阪府 | 一般 | 泉大津市役所 | 泉大津 |
5月8日~ 5月22日 |
7月24日~ 8月7日 |
10月23日~ 11月6日 |
1月22日~ 2月5日 |
大東市役所 | 大東 | ||||||
自排 | 外環河内長野 |
河内長野 (自排) |
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大阪市 | 一般 | 聖賢小学校 | 大阪市 | ||||
自排 | 出来島小学校 | 大阪市(自排) | |||||
堺市 | 一般 | 三宝 | 堺 | ||||
豊中市 | 一般 | 千成 | 豊中 | ||||
吹田市 | 一般 | 吹田北消防署 | 吹田 |
5月8日~ 5月23日 |
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自排 | 吹田簡易裁判所 | 吹田(自排) | |||||
東大阪市 | 自排 |
東大阪市環境衛生検査センター |
東大阪(自排) |
5月7日~ 5月21日 |
7月22日~ 8月5日 |
10月21日~ 11月4日 |
1月20日~ 2月3日 |
八尾市 | 一般 | 八尾保健所 | 八尾 |
5月8日~ 5月22日 |
7月24日~ 8月7日 |
10月23日~ 11月6日 |
1月22日~ 2月5日 |
※試料捕集は1季節 1日(23~24時間)×14回
2 年平均
- PM2.5質量濃度の年平均値は、堺で21.8μg/m3と最も大きく、吹田で18.4μg/m3と最も小さかった。(図1)
- 主な成分(NO3-(硝酸イオン)、SO42-(硫酸イオン)、NH4+(アンモニウムイオン)、OC(有機炭素)及びEC(元素状炭素))濃度は地点によって大きな違いはなかった。(図1)
- PM2.5質量濃度に占める割合が最も大きかったのはSO42-濃度で28~33%、次に大きかったのはOC濃度で17~23%であった。(図2)
図1 PM2.5中の各成分濃度(年平均値)
※その他成分には、ケイ素やOCに結合している水素や酸素などを含む(OCは炭素のみの濃度)。
※棒グラフ上端の値にはPM2.5質量濃度を示す。
図2 PM2.5質量濃度に占める各成分濃度の割合(年平均値)
3 季節平均
- PM2.5質量濃度の季節平均値は、春季・秋季に比べ、夏季・冬季に高かった。(図3)
図3 PM2.5質量濃度(季節平均値)
※ 春季:5/8, 10-11, 13-20、夏季:7/24-8/4、秋季:10/23-11/3、冬季:1/22-2/2
- NO3-は全地点とも夏季に濃度が低く、冬季に濃度が高かった。冬季は他の季節に比べ地点間の濃度差が大きく、河内長野(自排)で濃度が低かった。(図4)
- SO42-は全地点とも夏季に濃度が高く、他の季節の平均値の約2倍あった。夏季は他の季節に比べ地点間の濃度差が大きく、泉大津・堺・豊中・八尾で高く、吹田・吹田(自排)で濃度が低かった。(図4)
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OCおよびEC濃度は季節変動があまりなく、地点によって変動が異なっていた。(図4)
図4 PM2.5中の主な成分濃度(季節平均値)
- バナジウム濃度は、春季・夏季に高い傾向があった。秋季は濃度が低く濃度の地点差も小さかったが、その他の季節は地点差が大きく、特に、工業地域に近い堺や大阪市(自排)で濃度が高かった。(図5)
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他の地点に比べて濃度が高い成分は、測定地点近傍の影響を受けていると推測される。(図5)
図5 PM2.5に含まれる無機元素成分濃度(季節平均値)
4 日ごとの濃度
- PM2.5質量濃度は、夏季はSO42-濃度との相関が0.9以上と高く、濃度変動が類似していた。秋季はOC濃度と、冬季はNO3-濃度との相関が高かった。一方、春季は主な成分濃度との相関係数が0.43~0.67の範囲にあり、他の季節ほど明確にPM2.5質量濃度と濃度変動が類似している成分がなかった。(図6)
- 無機元素濃度はPM2.5質量濃度との相関係数が大きくなかった。
- 成分ごと(ヒ素、セレンおよび鉛以外)の地点間の濃度変動も類似していることはなく、地域での排出の影響を受けていると考えられる。
- 石油燃焼の指標であるバナジウム、ニッケルや鉄鋼業の指標である鉄、マンガン、亜鉛とPM2.5質量濃度との相関係数が四季の中で冬季に最も大きかったことや、冬季はPM2.5質量濃度とNO3-との濃度変動が類似していたことから、特に冬季は地域汚染の影響が大きかったと考えられる。(図6)
- ヒ素、セレンおよび鉛は他の成分に比べて地点間の濃度変動が類似しており、同じ要因の影響が大きいと考えられる。
夏季
秋季
冬季
図6 PM2.5質量濃度および成分濃度の経日変化
5 高濃度日の状況
図7に示すように11地点中1地点でも環境基準の日平均値である35μg/m3を超過した日をPM2.5高濃度日として、季節ごとに高濃度となった主な原因について考察した。
図7 高濃度日のPM2.5質量濃度
春季
5/21が高濃度日となった。大陸からの気流が運ばれやすい気象条件であり、石炭燃焼により発生するといわれている鉛、ヒ素やSO42-などの濃度が上昇した。よって、PM2.5質量濃度が上昇した主な原因は、東アジア規模の広域移流であったと推測された。
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図8 PM2.5質量濃度、SO42-およびヒ素(As)濃度(春季高濃度日) |
夏季
7/27、7/31が高濃度日となった。大陸からの気流が運ばれやすい気象条件で、鉛、ヒ素やSO42-などの濃度が上昇した。(7/27>7/31)さらに、C2O42-(シュウ酸イオン)とPM2.5質量濃度との濃度変動が類似していたことから二次生成の促進の影響もあったと考えられる。(7/27<7/31)よって、PM2.5質量濃度が上昇した主な原因は、東アジア規模の広域移流と二次生成の促進であったと推測された。
図9 PM2.5質量濃度、SO42-およびC2O42-濃度(夏季高濃度日)
秋季
11/2、11/3が高濃度日となった。風が弱く大気が安定しやすい気象条件で、汚染物質が蓄積しやすい状況であった。11/2は気温も高くOCおよびC2O42-濃度が上昇したことから光化学反応による二次生成の促進があったと考えられる。また、11/2は大陸からの気流が運ばれやすい気象条件で、SO42-などの濃度が上昇した。一方、11/2に濃度が高かったNOxは11/3にはNO3-へと反応が進み、NO3-濃度が上昇したと考えられる。よって、PM2.5質量濃度が上昇した主な原因は、11/2は東アジア規模の広域移流と二次生成の促進で、11/3は地域の発生源からの汚染物質の蓄積であったと推測された。
図10 PM2.5質量濃度、OCおよびNO3-濃度(秋季高濃度日)
冬季
1/25、1/30、2/2が高濃度日となった。大気が安定しやすい気象条件で、汚染物質が蓄積しやすい状況であった。特に、1/25は風も弱く、汚染物質が拡散しにくい状況であった。実際に、高濃度日3日間のうち、PM2.5質量濃度が35μg/m3を超過した地点数は1/25が最も多く、NO3-も全地点で調査期間最大値を示した。バナジウム、鉄、銅 およびNO3-濃度は地点間での濃度差が大きく、地域の発生源の影響を受けていることが示唆される。(図6)さらに、気温が冬季にしては高かったため、NOxからNO3-への反応も進み、NO3-濃度が上昇したと考えられる。よって、PM2.5質量濃度が上昇した主な原因は、3日間とも地域の発生源からの汚染物質の蓄積であり、その影響は1/25が最も大きかったと推測された。
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