大阪府立環境農林水産総合研究所

本田管理 その4

本田管理 その4

田植作業
田植前の準備

<春耕>

春先出来るだけ早い時期に田面を粗めに耕起しておく。特に冬耕を行っていない場合はできるだけ早めに刈株や稲わらを鋤き込んでおく。この時に土壌改良資材施用を同時に行っても良い。

<土壌改良資材施用>

石灰質土壌改良資材(苦土石灰、ようりん、ケイカル、ミネカル、かきがら石灰等)は早めに散布して鋤きこんでおく。

<基肥施用・耕起>

基肥は代かき前5日以内に施用し、ていねいに耕うんして鋤き込んでおく。施用が余り早すぎたり、散布後鋤き込まずに放置したりすると肥料成分が揮発したり、雨に流れたりしてロスするから注意する。

<入水>

代かき前日に入水する。排水口をしっかり閉めることも忘れずに。

<代かき>

代かきは基本的に田植えの2~3日前に行うが、土質によって時期を調整し、田植え時に田面が柔らかめの「ようかん」程度の固さになるようにする。砂質土壌の水田ではあまり早くから代かきすると田植え時に田面が固くなりすぎるし、逆に柔らかすぎると浮き苗や転び苗、深植え水没の原因になる。
代かきは縦横2回以上ずつ走って田面を十分に均平にし、刈り株や雑草を埋没させる。
コーナーをこねすぎると均平が取りにくい。最終的に高低差2~3cmに仕上がれば上々である。
漏水田では、ていねいに代かきを行って、できるだけ細かい粘土質を舞上げて水漏れ穴をふさげるようにする。逆に有機物の多い水田や粘土質の強湿田ではこねすぎると後に酸欠で根腐れを起こしやすいのでほどほどのところでやめておく方が良い。

<畦塗り>

コンクリート畦畔の場合は省力化できるが、土畦畔の場合は漏水防止のためクワでていねいに泥を畦に塗り込み、水漏れ防止を行う。
そのほかの方法として入水前に行わねばならないが、トラクターに装着する畦塗り専用のアタッチメントを利用したり、「あぜなみシート」などポリの畦畔板を設置することもできる。
「マグホワイト」等マグネシウム質固化資材で畦の土を固形硬化して漏水防止、雑草抑制を行う資材も登場してきている。

田植作業
<田植時期>

大阪府平坦部では5月中下旬から田植が始まり最盛期は6月上旬である。中山間部では5月上旬から始まり5月下旬が最盛期となる。6月中にはほぼすべての水田が田植えを終えている。近年田植時期の前進が見られたが夏期異常高温による高温登熟障害による白未熟粒発生等の対策もあり一時期よりは遅くなりつつある。

大阪府における水稲育苗~移植作業期間

<移植時箱施用病害虫防除>

本田における病害虫防除の第一段階が箱施用剤である。移植前に箱施用専用の防除薬剤を育苗箱に施用し、移植された苗とともに本田に移すことで防除効果を得る。薬剤によって異なるが、いもち病、紋枯病、ウンカ類、ツマグロヨコバイ、ニカメイチュウ、コブノメイガ、イネツトムシ、イネドロオイムシ、イネミズゾウムシなど水稲初期の病害虫に広範囲に効果がある。また残効期間も2ヶ月近く効果のある剤もあり、省力的に病害虫対策ができる。薬剤は顆粒状の粒剤が多いので散布時は苗の葉が乾いているときに所定量を振りかけ、葉に付いた剤を払い落としてから軽く散水して薬剤を下の床土へ落としておく。

<田植え時の水管理>

田植え時には作業性を高めるため、ヒタヒタ水か浅水になるようにする。田植え作業が終わったら水を戻し、2~3cm程度の水位を保つ。

<植付作業>

植付作業

植付株間と栽植密度の関係

植付深は2~3cm程度が良い。あまり深いと水没したり活着不良、初期生育不良になりやすい。完全に水没した苗は気温が高い時は3日くらいで枯死してしまうこともある。逆に浅すぎると浮き苗、転び苗の原因になるので注意。田面の固さ、作土深、機械の種類によって植付深が安定しないこともあるので田植機の目盛に頼らずに実際の植え付け状況を見ながら調節する。

<栽植密度>

府内の水田の栽植密度はおおむね15~27株/平方メートル(50~90株/坪)の範囲内である。
栽植密度が高すぎると一定面積中の苗本数が多いため過繁茂になりやすく、そのほ場の地力にもよるが生育後半に凋落傾向が見られることが多い。
17~22株/平米(56~72株/坪)の範囲で移植する方が良い結果が得られることが多い。

<1株あたり植付本数>

栽植密度と同じく1株あたり植付本数も後の生育を左右するファクターである。1株あたり3~5本になるように田植機の掻き取り量を調整しましょう。植え付けた後の株を実際に抜いて何本植わっているかを実際に確認することが大切。自分では細植えしているつもりでも実際はかなりの本数が植わっていることが多い。
後の農薬散布や施肥用管理通路として8~10条ごとに1条飛ばして通路を確保することも良いでしょう。こうすると1割減収しそうに思いますが、空いている空間には隣の条から葉や茎がたれ込んできて補償するので実際は収量には変化無いことが多い。

<補植>

田植機が空打ちしたところや旋回時の端等は苗が植えられてないので、田植直後~除草剤散布までの間に必要な場合は補植を行うが、かなりの手間と労力が必要なので2株連続して飛んでいるようなところを補う程度で十分である。実験的には5%以上欠株(約1平方メートルに1株。通常はあまり起こらないレベル)しないと収量には影響しないとされているので無理に行わなくてもいい。
なお、補植後の余り苗を田に放置すると、いもち病やウンカ、ヨコバイの発生温床になるので速やかに除去する。基本的には活着して除草剤を散布する時期には撤去しよう。