大阪府立環境農林水産総合研究所

図鑑

淡水魚図鑑(在来種)

その他(府内には生息しない魚種)

キタノトミヨ(イバラトミヨ)

キタノトミヨ(イバラトミヨ)

本種はトゲウオ科に属し、イバラトミヨとも呼ばれる。新潟県以北の日本海側と青森県以北の太平洋側、北海道では主に太平洋側に分布している。さらに本種は広域に分布する淡水型、秋田県雄物川流域にのみ生息する雄物型、北海道東部の汽水域に生息する汽水型に分かれる。
 トミヨ、イトヨ、ハリヨなどトゲウオの仲間は、いずれも背びれの前方に独立したトゲをもち、オスが産卵期には植物の破片で鳥の巣のような巣を作るのが特徴である。本種の背トゲは8-10本である。国内のトミヨ属には、本種以外にトミヨ、エゾトミヨ、ムサシトミヨミナミトミヨが知られているが、これらの分類には様々な説があり、本種についても、別種とされていたトミヨと本種の淡水型が同種で、本種の汽水型、雄物型がそれぞれ別種となるとの研究結果もある。また、トミヨと本種が共存する水域では交雑も起こっている。
 本種は冷水性の魚種で、湿原を流れる川の中下流や湖沼に生息するが、北海道と青森県を除く地域では生息場所は湧水地あるいはその流域に限定されている。小型の甲殻類やユスリカなどを食べている。産卵期は5-7月(北海道の事例)で、オス(※1)は川岸の水草の枝などに植物の繊維と粘液をからめた巣をつくり、雌を誘う独特の求愛行動(ジグザグダンス)を示す。巣に産みつけられた卵はオスによって保護され、7-10日ほどでふ化する。オスの保護は仔魚が巣を離れるまで続く。寿命は1年半、まれに2年生きるものもいる。環境省のレッドリスト2020では本種を含む“本州のトミヨ属淡水型”が「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されている。

オス

(※1)オス